「ド・ド・ドリランド!」のフレーズのCMを聞いたことがあるのではないでしょうか?
これはSNSで有名なグリーの探検カードゲームなのですが、
こういったSNS上で他のユーザーとコミュニケーションをとりながら遊べるオンラインゲーム、
いわゆるソーシャルゲームが若者達を中心に人気です。
※SNS(Social Networking Service)
コミュニティ型のWebサイト。
友人や知人とのコミュニケーションを円滑にする手段や場を提供したり、
趣味や住所が近い人物との出会いを提供する会員制のサービス。ソーシャルゲーム市場は2012年には
約3400億円市場に成長すると予測されていました。
そのソーシャルゲーム市場で2011年から急速に人気を集め普及していたのが
「コンプガチャ」(コンプリートガチャ)なのですが、そのコンプガチャが規制されることになり、
業界はパニックになっています。
まずソーシャルゲームについて順を追って説明してみます。
■ソーシャルゲームとはPS3などの家庭用のテレビゲーム機や、
PSPやDSなどの携帯用ゲーム機などの、
いわゆるコンシューマーゲームとは違い、
アカウントさえ登録してしまえば、
いつも持ち歩ける携帯やスマートフォンで遊べるのがソーシャルゲームです。
他のプレイヤーとのコミュニケーション機能も特徴ですね。
これらのゲームは、
携帯やスマートフォンでちょっとした空き時間に遊べるようにか、
短時間で気楽に遊べるようになっているものが多いようです。
またソーシャルゲームはPSPやDSなどのコンシューマーゲームと違って、
・ゲームを安く開発できる
・利益率が高い
・企業が新規参入しやすいと企業にも旨みがあるものでした。
■「無料」のソーシャルゲームで「課金」!?興味の無い人でも、CMがバンバン流れているので、
「GREE」「モバゲー」という言葉を知っている人は多いんじゃないでしょうか。
「グリーッ!」というCMのフレーズも聞き覚えありますよね。
「GREE」や「モバゲー」はCMをバンバン流し、
「無料」で遊べると強調し若者を中心に会員数を増やし業績を伸ばしていきました。
しかし、ゲームを有利に進めたり、
楽しむためのアイテムをゲットするためには、
やはりお金が必要だったりします。
夢中になった子供が何10万円も課金してしまって、
「まぎらわしい」
「景品表示法の違反ではないか」
(景品表示法:サービスや商品をよく見せようとウソや大げさな表現するなということ)と苦情が殺到したため、「無料」ではなく、
「一部無料」と表現するようになりました。
儲けまくっていたソーシャルゲームですが、
当初からこういった非常にグレーな部分があり問題となっていました。
■大人気の「コンプガチャ」
「ド・ド・ドリランド!」のCMで有名なグリーの「探検ドリランド」。
ソーシャルゲームで特に人気がありユーザーがお金を落とすのが、
ドリランドで行われていたような
「コンプガチャ」(コンプリートガチャ)だったそうです。
・ガチャ1回300円
・ガチャから出るキャラ50種類以上。
・その中の9種類をコンプリートするとレアキャラ進呈 という仕組みだそうです。
■大もうけする企業「グリー」「DeNA」
この「コンプガチャ」は大ヒットしました。グリーやDeNA(モバゲーの運営会社)は毎年収益をぐんぐん伸ばし、
DeNAはプロ野球団まで買収するほど儲けました。
こんな状況ならどんどんゲームやスマートフォンのアプリを開発したいところでしょうが、
エンジニアは不足しています。
そのためエンジニアを確保したいグリーやモバゲーは
「新卒を1000万以上で採用」
「中途採用者に200万円程度の入社一時金」なんてことまでやり社員を大量に雇ったり、給料を上げたりしました。
まさにバブルですね。
コンプガチャで濡れ手に粟で大もうけ!
みたいな夢のような状態が、いつまでも続くと思っていたのでしょう。
■ついに規制!?「コンプガチャ」は違法!1回300円でガチャしてカードをあつめて限定カードをゲットするという、
コンプガチャのようなシステムでは、
珍しいアイテムを手に入れようと若者はやっきになりやすく、
「パチンコに似て依存性が高く、射幸心をあおる」
「中学生が親のスマートフォンで遊び70万円の請求が来た」などと問題が指摘されていて、
実際に何十万も使うケースが増え社会問題化しました。また、
「コンプガチャ」は以前から
「違法なのではないか」という指摘があったそうです。
というのも、
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」というものがあり、その
5項に、
「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、
異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法
を用いた懸賞による景品類の提供は、してはならない」とあるからです。
そもそもコンプガチャのような「カード合わせ」ゲームは、
子供向け商品に使われることが多かったそうで、
ハマる子供たちが多かったことなどから、
昭和44年の懸賞制限告示の改正の際に禁止されていたという経緯があるそうです。
昭和44年にはネットは存在せず、
今のような状況は想定していなかったのでしょうが、
コンプガチャはまさに似たような手法で、法に抵触しそうですね。
「違法なのではないか」と言われるのも当然かもしれません。
そんな中、5月5日付の読売新聞に衝撃の記事が載りました。
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読売新聞(5月5日付)
携帯ゲーム新商法「違法」消費者庁、中止要請へ
「高額課金問題をめぐり、消費者庁は、特定のカードをそろえると希少アイテムが当たる
「コンプリート(コンプ)ガチャ」
と呼ばれる商法について景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、近く見解を公表する」
------------------------------------------------「事実上の違法認定」となれば改善通知が業界団体に送られるそうですので、今はまだ
「その前段階」といったところでしょうか。
■ソーシャルゲーム関連企業、大暴落!事実上の違法認定ではありませんが、
「コンプガチャ」を禁止する方向で消費者庁が動いているという5月5日のこの読売新聞記事は、
グリーやDeNAや関連企業に大ダメージを与えるのに十分でした。
最も下落したのがソーシャルゲームの開発・運営を行っているコナミ。
そしてグリーとDeNA(モバゲーの運営会社)は
ストップ安となりました。

(グリーの株価)

(DeNAの株価)
ガクン!とすさまじいほど下落しています。
※ストップ安とは
株価の異常な急騰・暴落を防ぐために、株価の1日に変動できる上下の範囲を制限するもの。
この制限値幅の限界まで下落することをストップ安という。(逆はストップ高)東証の値下がりランキング(10:00現在)
1位にグリー(ストップ安)
2位にドリコム
3位にクルーズ(ストップ安)
4位にアクセルマーク(ストップ安)
6位にサイバーエージェント
7位にコナミ
14位にエイチーム
※ディー・エヌ・エーもストップ安
「違法認定されるかも!?」
という記事ひとつでここまで株が暴落するんですね。■起きるか!?集団訴訟改善通知が業界団体に送達され、
「コンプリートガチャは違法」と事実上違法認定されれば、利用者による訴訟の可能性も出てきます。
一説によれば返還対象は総額で
1200億円以上とまで言われています。
・・・大勢の人間を熱狂させ、大儲けできた事業が、
たった一つの記事でこうまで崩壊してしまうんですね。
このソーシャルバブルの崩壊で、
SNSやソーシャルゲームがどう変わっていくのか、
球団を買ったり社員を雇いまくったりと、
ガンガン行こうぜしていたグリーやディー・エヌ・エーはこれからどうなってしまうのか、
かなり興味があります。
また機会があれば取り上げたいと思います。